隊友ファミリーに奉仕するOB・OG集団

★「わが汗ムダであれ」(2018年5月20日)

 

これは昭和五十五年(1980年)、
今から約四十年ほど前の航空自衛隊のPRポスター
を見たときの私の印象である。
(下の写真と実際のポスターとは異なります。)

 

 

「わが汗ムダであれ」

 

 

訓練に飛び立つ直前の眼光鋭い
戦闘機パイロットの大写しの顔写真と
「わが汗ムダであれ」
という文字があった。

 

私が二十代の終わり頃、
幹部学校(当時市ヶ谷、現在目黒)の
幹部普通課程(SOC)に入校中に
「この航空自衛隊のポスターを見て、君は何を思うか?」
という課題が出された。

 

SOCでは授業の度に課題が出され、
私はその都度、
無い知恵を絞ってレポートを提出していたが、
このひと味違った課題のことは今でもはっきりと覚えている。

 

普通、
人は誰しも
「わが汗ムダであれ」とは思わず、
逆に
「わが汗役に立て」と思うものである。

 

私はそれまで
「わが汗ムダであれ」
とは考えたこともなかったし、
このPRポスターを見て、
自分は
こんなカッコいいことを言えるほど
深い考えをもち、
かつ情熱をもって
訓練に励んでいるだろうかと
忸怩たる思いがした。

 

武力集団には
「厳しい訓練を行なえば行うほど実際に使う機会が少なくなる」
といったパラドックスがある。

 

 

まさに
古武道の言葉にある
「刀を使わないために、常に刀を研いでおく」
という抑止の論理そのものであり、
「わが汗ムダであれ」という言葉は
日々厳しい訓練に臨む自衛官の心の叫びであろう。

 

 

課題に対する私のレポートの結論は
概ね以上のようなものであったと記憶している。

 

このポスターは
自衛隊以外の民間の人達に対する
PR用に作成されたものだったのであろうが、
自衛隊の内部にいる我々に対しても
強いメッセージ性をもったカッコいいポスターであった。

 

 

そしてこの
「わが汗ムダであれ」
というPRポスターは、
私の頭の片隅に現役時代はもとより、
定年後の今でも鮮明に残っている。

 

 

 

 

 

 

★「大使館の世界地図」(2018年4月5日)

 

その世界地図は、
私がこれまでに見たことがないものだった。

 

 

これは、今から三十年ほど前、
私が統合幕僚会議事務局長(現在の統合幕僚監部幕僚副長)の
副官をしていた時の話であるが、
事務局長のお供で時々
都内の大使館にも行くことがあり、
その日はA国大使館に行った。

 

事務局長が
A国大使や駐在武官と用談をしている間、
私は隣の控えの部屋で待っていたが、
その部屋の壁の真ん中にその世界地図はあった。

 

横幅は優に二メートルはあり、
金色の派手な額縁に入れられ
堂々と掛けてあった。

 

その地図の中央には
イギリス、それとヨーロッパがあり、
それを囲むように
アメリカとユーラシア大陸が広がっていた。

 

日本は?

 

と見ると、
地図の一番右端
つまり東のはずれにポツンとあり、
いつもの地図で見るより
心なしか小さく見えた。

 

いつも見る地図との
あまりの違いにしばらく見詰めてしまった。

 

いつも見る世界地図は、
これが当然であるかのように、

 

中央に日本があり、

 

右手に太平洋、
その先にはアメリカがあり、
また左手には中国、ユーラシア大陸が広がり
ヨーロッパまで伸びている。

 

私は、
何の疑念も抱かず
世界中の人々が

 

「中央に日本がある地図」

 

を見ていると思っていた。

 

しかし、実際には
A国大使館の人達をはじめ、
おそらく多くの外国の人達は
全く違う世界地図を見ていたのだろう。

 

 

逆に彼らは
日本に来て

 

「中央に日本がある地図」

 

を見て驚いたのかもしれない。

 

このように欧米がメインで、
日本が東のはずれ、

 

つまり
極東(北極や南極と同じ「極」の字がつく「極東」)
にある地図を毎日見ていたら、

 

世界観も相当違ってくるだろうし、
日本は
かなり異なる文化を持っていて神秘的、
と彼らが感じるのも
無理はないかもしれない。

 

また
人の関心は物理的距離に反比例するものであり、
日本と中国を比べてみても、
中国の方が地理的に近いので、
中国の方に関心が高く、
日本人が思うほど
彼らの日本に対する関心は高くはないであろう。

 

良く欧米では
東シナ海や尖閣諸島問題に
関心が薄いと言われるが無理もないと思う。

 

 

異なった地図からは
異なるものが見えてくるものであり、
固定観念に囚われない
柔軟な発想が大事だと思う。

 

欧米人はそういう地図を見て、
そういう感覚を持っているということを知った上で、
彼らと接するべきであろうと思う。

 

 

 


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