「損害保険会社勤務を経験して」
『交通事故の良くある質問にお答えします』
        (株)タイユウ・サービス 保険部 課長  室 坂   勉
〇 はじめに
   私が記事を掲載させていただくのは、自衛官現職時に、服務指導の担当者として交
通事故の知識が浅く失敗した経験と、損害保険会社(以下、損保という。)に十年間勤務した経験を 踏まえ、皆様のお役に立てる内容を咀嚼し、私見を織り交ぜて、質問形式で掲載さ せていただきます。少しでも活用して頂ければ幸いです。
         目    次
Q1 自動車事故の責任はどんな種類があるの? 
Q2 被害者への賠償はどのように、自分の怪我はどうなるの?
Q3 交通事故に遭遇したら自分の治療はどうすれば良いの?
Q4 妥当な慰謝料(示談金)を受け取る方法は?
Q5 交通事故を起こすと任意保険が3等級ダウンすると聞き ました。仕組みを教えて?

 

Q1 自動車事故の責任はどんな種類があるの? 

事故の種類 責   任 具体的責任

人身事故

刑事上 懲役・罰金・禁固刑
行政上 運転免許証の取消し・反則金
民事上 被害者に対して、金銭で損害賠償を負う。
物件事故 悪質な場合を除き、刑事・行政上の責任を負いません。

注目!!
皆様の場合、上記の他、懲戒処分の対象となる場合があります。ドライバーとしての責任を良く理解しハンドルを握りましょう。
また、社会的責任として始めから損保会社に頼りきりの事故対応でなく、あくまでも事故を起こしたのは自分だとのスタンスで、被害者に対し誠心誠意対応することが大切です。

 

Q2 被害者への賠償はどのように、自分の怪我はどうなるの?
A  被害者への賠償は、先ずは、国の強制保険である自動車損害賠償責任保険(以下自賠責という。)をもって賠償します。怪我の場合、最大で(被害者一人に対し120万円・死亡の場合最大で3千万円になります。)次に、自賠責の賠償範囲を超える場合は、自動車保険(任意保険)で対応します。自動車保険(任意保険)は、相手への損害賠償

対   象 保険の種類 補償内容
被害者への賠償 自動車損害賠償責任保険   (自賠責) ・傷害・後遺障害・死亡の補償(被害者救済が目的)

傷害:最大で120万円/1人
後遺障害:程度に応じて補償
死亡:3千万円(年齢等に応じ)

自動車保険(任意保険)「自賠責を超える場合使用」 ・対人・対物賠償責任保険 各人毎設定できますが、無制限が一般的
加害者の補償 ・人身傷害保険 怪我による治療費、休業損害、後遺障害、死亡等(年齢、収入、家族構成等に応じ)を補償
搭乗者の補償 ・搭乗者傷害保険(保険会社により人身傷害保険に含まれます。) 入・通院日数に応じて一時金を支給。加害者同様に人身傷害で補償。
加害車両の補償 ・車両保険(※付保すると保険料は高くなります。)

加害車両の時価額に基づいて補償されます。  一般条件:自損事故補償
限定条件:自損事故無補償

業務上・通勤途上の被害者の補償 公務災害補償(労働者災害補償保険) 業務上(業務災害)又は通勤途上(通勤災害)の事故に伴う治療費・休業損害・後遺障害・死亡に対して労働者のための保険給付
被害者(加害者含む。) 共済保険(健康保険) 実費分の治療費等を補償

として相手を死傷させた場合は、対人賠償責任保険、財物を壊した場合は、対物賠償責任保険で対応します。
 また、自分自身の怪我及び搭乗者が死傷した場合は、人身傷害保険・塔乗者傷害保険が 使用されます。加害車両の修理等には、車両保険が使用されます。
参考までに車両保険を付けると保険料が高くなります。車両保険には、自損事故も対象となる一般条件と自損事故は補償されない限定条件があり、このため一般条件の保険料は限定条件に比べて高くなります。
 その他、業務上・通勤途上の被害者への事故対応であれば業務・通勤災害(労働者災害補償保険)(以下労災という。)で治療費・休業損害・後遺障害・死亡に対応する場合もあります。自損事故や被害者に相応の過失がある場合は、治療費等を共済保険(健康保険)で対応する場合もあります。『この場合は、事前に共済担当にご相談下さい。』     
更に、自転車搭乗中の事故には、自転車保険(ご自身の怪我と第三者への賠償責任を補償)や個人賠償責任保険(日常生活で他人に怪我をおわせたり他人の物を壊した場合等補償)で法律上相手方から損害賠償請求があった場合に補償されます。更に、個人賠償責任保険は、漏水等で階下の部屋に迷惑をかけたり、散歩中に飼い犬が他人を噛んだり、デパートで高価な陳列物を破損した場合等でも補償される有難い保険です。勿論、お子様が自転車でベンツに損害を与えた時にも補償されます。この個人賠償責任保険は、火災保険・自動車保険又は傷害保険等に特約として付加されている場合が多いようです。※蛇足ですが、個人賠償責任特約(補償上限1億円が一般的)・弁護士費用特約(費用300万円が一般的)は、同居の家族が契約していれば同居者全員をカバーされますので、重複して加入している場合は、一契約で十分だと思います。

 

Q3 交通事故に遭遇したら自分の治療はどうすれば良いの?
A 初診について、重傷で救急搬送された場合は、救急車の判断に従って下さい。その他
の場合は、近所で評判の良い整形外科を自分で探しましょう。   
事故地が自宅から遠方の場合は、次の日から近所の整形外科で通院可能です。リハビリは、整形外科医に相談するのが良いでしょう。近所で予約なしでリハビリが希望の場合は、整形外科へ一声かけて接骨院・整骨院(資格は柔道整復師)でもリハビリが可能です。なお、鍼灸院・整体等は、基本自由診療(一回5千円から1万円)ですから高額のためお勧めしませんが、整形外科医の許可を得て、診断書等に「鍼灸治療を認める。」と記載して頂いた場合は治療が可能です。蛇足ながら、慰謝料(精神的・肉体的苦痛に対しての賠償)は、整形外科への通院回数も接骨院等への通院回数も同等にカウントされますが、鍼灸院等は半分になります。
   治療期間管理について。事故直後は、緊張しているので痛みが発症しない場合がありますが、医学上48時間以内に発症すると言われています。事故現場で「痛みは無く大丈夫」と軽々に話さないように。通常警察官は、外傷が無い場合、事故証明を「物件事故」で取り扱います。基本的には、物件事故の場合、刑事・行政責任は問われません。ただし、途中から損保・加害者の対応が不満な場合、被害者が感情的になり通院して警察へ診断書を提出します。そこで、事故は『人身事故』に変更になり、加害者は、刑事処分・行政処分を問われることがあります。事故で揉めたら、処分が重くなることが有りますので注意しましょう。   
また、怪我がある場合は、事故から2週間以内に必ず受診してください。事故と怪我との因果関係の立証が困難となるからです。
 損保が考えている治療終了の安目は、打撲捻挫等は概ね3ケ月、骨折等は概ね6ケ月です。その目安は、症状固定時期「痛み等が一進一退の時期で、現代医学を駆使しても劇的な回復が見込めない時期」であり、保険対応終了の時期と言われます。症状固定の時期を過ぎて、治療を認定する場合、怪我の担当医に文書で医療照会を実施し、症状固定の見込みと根拠を問い合わせます。次に、担当者は医療照会結果を得て、被害者と面談し、症状固定交渉を行います。被害者が、納得することなく更に、通院を継続する場合は、保険対応の中止や、弁護士委任し早期示談を目指します。概ね症状固定時期を目安とし、治療終了し示談交渉を迎えましょう。

 

Q4 妥当な慰謝料(示談金)を受け取る方法は?
A 妥当な慰謝料「肉体的・精神的苦痛に対する賠償金」は、医学的根拠に従い損害と賠償のバランスの一致だと考えます。但し、新車を購入する場合、担当者の値引きと店長の引き額に差があるように、示談交渉も一般的に、担当者は、通院日数・通院期間に応じて自賠責基準で算出(怪我が軽微な場合や過失のある事故の場合は、自賠責基準が有利です。治療費、通院交通費・休業損害そして慰謝料を自賠責の120万円以内で有効に使用しましょう。)します。次に被害者が納得しない場合、任意保険基準(下限から上限の幅有り。)の範囲内で解決を目指します。更に、被害者が納得ない場合、担当者は、契約者の了承を得て弁護士委任をし、調停・訴訟で公の判断を受けることになります。何れにせよ、合理的示談交渉で臨みたいものです。決して、事案担当者に威圧的され補償外の要望をして困らせないようにして下さい。出来ましたら協力的に対応していただけると示談交渉も順調に進むと思います。

 

Q5 交通事故を起こすと3等級ダウンすると聞きました、仕組みを教えて? 
A 保険料算定の仕組みは、保険金額、保険期間、免責金額(自己負担額)等の他に、等級別割引・割増、保険者の年齢別、ゴールド免許等各種割引制度で決定します。なかでも、等級別割引・割増が保険料決定に大きな影響を及ぼします。例えば、事故発生時、自賠責を超えて、任意保険(人身傷害保険のみの事故を除く。)を使用すると、翌年の等級が3等級ダウンします。等級は、1等級から20等級に区分され各等級ごと、等級が上がるに従い割引率がアップします。   
新契約は「6等級からスタート(4%割増) 2023年1月より3%増となります。」です。等級は、1年間無事故なら1等級アップとなり、3年間無事故で元の等級に戻ります。例えば、現在10等級で3等級ダウン事故を一回起こすと来年は7等級となり保険料が高くなります。また、新契約から14年間無事故なら20等級に到達し最高割引63%となります。読者の皆様も安全運転を継続し20等級を目指して頑張りましょう。

 

〇 おわりに
  以上、今日まで私自身が現場で経験した交通事故に関する知識について、思いつくまま記述しましたが、「万人は一人のために、一人は万人のために」。が保険の原則です。どうか、「お互い様の精神」と道義的責任を踏まえ、自分と家族のため保険に加入して頂きたいと思います。今後の、服務指導・自身のカーライフの参考として頂ければ幸甚です。詳細は、皆様の保険代理店等へお問い合わせください。

 

◎ご相談は、いつでも「無料」で応じております。

 

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